AI開発 · 2026.06.21

GoogleのAgentic Resource Discoveryとは?ARDとAgent Registryで何が変わる?A2A・MCP・社内ガバナンスを整理する導入ガイド【2026年速報】

GoogleのAgentic Resource Discoveryとは?ARDとAgent Registryで何が変わる?A2A・MCP・社内ガバナンスを整理する導入ガイド【2026年速報】

Googleは2026年6月17日にAgentic Resource Discovery(ARD)specificationを発表しました。3ヶ月経過した2026年9月現在、Gemini Enterprise Agent Platformへの統合が急速に進み、多くの企業が社内エージェント基盤への導入検討を始めています。ARDは、Web上に散在するツール、スキル、エージェントを、組織のドメインにひもづく形で公開し、見つけ、検証するための共通仕様です。生成AIの導入が深まるほど、社内エージェントは自社ツールだけで完結せず、他部門や他社のAI資産に安全につなぐ必要があり、その時になって『資産の所在が不明』『信頼できる相手がわからない』という問題が顕在化しています。

従来、企業のエージェント導入は『ツール選定 → 自社カスタマイズ → 部署ごとに導入』という分散形でした。しかしA2A(Agent-to-Agent)通信、MCP(Model Context Protocol)、OpenAPI統合が一般化した2026年、その分散構造そのものが統制コストを生み出しています。ARD + Agent Registry により、発見と検証の層が組織全体で統一でき、結果として『見える化 → ガバナンス → スケール』という実装ロードマップが引き直されつつあります。

Agentic Resource Discovery(ARD)の3つの核

ARDは、AI capabilitiesを公開、検索、検証するためのopen specificationです。Googleは6月の発表後も、採用企業からのフィードバックに基づいて仕様を改良し、2026年9月時点で以下の3層が明確化しました。

第1が『Catalog層』です。各組織が自社ドメイン配下に ai-catalog.json を置き、自社が所有・公開するMCP servers、A2A agents、OpenAPI tools、さらに別のcatalogを定義します。所有権がドメイン単位で明確化されるため、『誰が何を出しているか』の起点になります。

第2が『Registry層』です。複数組織のcatalogをcrawlし、globally unique URNでindex化し、agentのdiscovery requestに対して候補と検証用メタデータを返します。Gemini Enterprise Agent Platformに統合されたAgent Registryは、いまこの層の中核を担っており、企業はGoogle Cloud Consoleから社内エージェント、スキル、外部接続先をSearch & Discoveryできるようになっています。

第3が『Direct Fetch層』です。すでに信頼済みの取引先や自社グループ会社なら、検索を経由せず直接catalogを取得できます。Agentic Egress Policyで『この相手の このバージョンの tool のみ許可』という制御まで可能になるため、検索のオープン性と実行時の統制を両立できます。

Gemini Enterprise Agent Platform での実装状況(2026年9月)

GoogleはARDをGemini Enterprise Agent PlatformのAgent Registryへ統合することを6月に公表し、9月時点で多くの機能がGA(General Availability)に昇格しています。以下が現在の利用可能状況です。

✅ Agent Registry Search & Discovery:企業のGoogle Cloud Consoleから社内すべてのエージェント、スキル、MCP servers、external toolsを一覧・検索可能(デフォルトで非公開、管理者が公開範囲を設定)。

✅ URN(Uniform Resource Name)自動付与:各リソースに globally unique namespaced identifier が付与され、複数Googleプロジェクト間でのクロスリファレンスが可能。

✅ Agentic Egress Policies:管理者がagent実行時のツール呼び出し先、バージョンpinning、条件付き許可を定義可能。

✅ Catalog JSON Upload:自社ドメインから ai-catalog.json をアップロード、またはGoogle Cloud Storageのwell-known pathに配置して、Platform側でauto-discoverさせることも可能。

⚠️ Cross-Organization ARD Exchange:外部企業との直接catalog交換は、2026年9月時点でまだプレビュー段階。実装時期は『Q4 2026 予定』とアナウンスされています。

A2A、MCP、OpenAPI との役割分担

ARDはプロトコルそのものではなく、発見・検証の層です。実行時の通信方式は別です。実装の際の判断基準は以下の通り。

【A2A(Agent-to-Agent)】:別のエージェント(GeminiのマルチエージェントやThirdPartyエージェント)に仕事をhand offし、対話を続ける場合。文脈の受け渡し、中断・再開、確認質問が必要なワークフロー向け。例:契約書レビューエージェント → 法務エージェント(質問返却) → 契約修正エージェント のチェーン。

【MCP(Model Context Protocol)】:外部ツールやデータ源(カスタムDB、社内ナレッジベース、SaaS API)をモデルのContext Windowに統合し、実行時に呼び出す場合。同期的、単一呼び出し向け。例:BigQuery MCP server、Salesforce MCP server、社内文書検索MCPサーバー。

【OpenAPI】:既存のREST API、WebhookやEvent-driven architectureを直接integrate。汎用・標準化されたインタフェース。例:既存社内業務システムのAPI、SaaS連携。

この3層の上に『ARDで何を見つけるか』『どこまで検索させるか』『実行時にどれを使うか』という ガバナンス が乗ります。企業が実装する際、プロトコルの導入だけに注力して棚卸し・権限制御が後回しになると、『見える化したら統制不能になった』という落とし穴に陥ります。

実装前に確認したい6つのチェックリスト

ARD + Agent Registry を導入する企業向けに、実装前のチェックリストを整理しました。現実的な段階化を重視した6項目です。

✓ 1. 棚卸し対象の明確化:社内エージェント、スキル、MCP servers、外部API(OpenAPI)を全部署で一覧化。『だれが作った』『どこで動いている』『データ種別は何か(個人情報、規制対象など)』まで整理。この段階で『エージェントだと思ってたのは実はスクリプト』『MCPサーバーが3つ重複している』といった重複や誤分類が見つかります。

✓ 2. Catalog化単位の決定:部署ごと、プロダクトライン別、共通基盤ごと、または個別ツール単位のどれで ai-catalog.json を作るか。責任分界、メンテナンス頻度、バージョン管理を見越して決定。(推奨:プロダクト単位 > 部署単位 > ツール単位 の順で大きい粒度から)

✓ 3. 検索公開と非公開の分別:Registry で全社検索可能にする資産、direct fetch 限定にする資産、完全に非公開の資産を分類。特に個人情報・規制対象・顧客秘密の3種類は、『見つかるが使えない』状況を避けるため、最初から アクセス制御 を設計に含める。

✓ 4. Egress Policy と Pinning ルールの定義:『Salesforce agent は HubSpot にアクセスできるか』『BigQuery tool は v1.5 以上のみ』『外部エージェントが社内データベースにアクセスする場合の条件』などを明文化。Cloud IAM + Agentic Egress Policies で実装。

✓ 5. 監査ログと Visibility の確保:Agent Registry から何が呼ばれたか、誰が何を検索したか、外部接続が成功/失敗したかをログに記録できる体制。Cloud Audit Logs, Cloud Logging の設定を入れておくと、後から『意図しない相手へのアクセスがあったか』を調査できます。

✓ 6. FAQ と 例外運用プロセスの先行準備:『Agent Registry に登録したいが、どこに申請するか』『査定期間は?』『新しいMCPサーバーを追加するときのチェックリスト』『こういう場合は非公開にできるか』といった FAQ を、導入前に作成し、チーム間で共有。『見える化』が進むと『なぜこれは見つかるのに使えないのか』という問い合わせが増えるため、事前に応答体制を整えておく方が無駄がありません。

導入ロードマップ(段階的実装例)

ARD + Agent Registry を 3ヶ月で段階的に導入する場合の実行計画。規模や組織体制に応じて調整してください。

【Phase 1:月 1(0-4週)- 棚卸し & 設計】所有部署×棚卸しタスク。Catalog 単位、公開範囲を決定。ai-catalog.json テンプレートの準備。

【Phase 2:月 2(4-8週)- パイロット】共通基盤の MCP server 3-5 個を Agent Registry に Upload。社内チーム(5-10名)で Search & Discovery をテスト。Egress Policy を 1-2 個実装。フィードバック収集。

【Phase 3:月 3(8-12週)- 本格展開】残りの部門別 Catalog をアップロード。全社検索を開始。監査ログの設定確認。運用 FAQ の公開。

よくある質問

Q1. ARD がある場合、A2A や MCP は不要ですか?

A. 不要にはなりません。ARD は『見つける、検証する』層であり、『実行する』層ではないからです。A2A は agent 同士が対話するプロトコル、MCP は model が外部ツールを呼ぶプロトコル。つまり ARD で『Salesforce CRM data を BigQuery に同期するエージェント』を見つけた後、実際の接続は MCP で行います。

Q2. いま(9月)始めるなら、何から準備すべきですか?

A. まず社内のエージェント、スキル、MCP server、API 連携を全部署で棚卸しし、excel または Google Sheet で『資産名 | 所有部門 | 概要 | データ種別 | 外部接続先』の5列を作成。同時に Gemini Enterprise Agent Platform の Agent Registry を探索してみてください。9月時点で多くの機能が使用可能なため、パイロット部門(IT部 or データチーム)で試す価値があります。

Q3. Google の基盤だけの話ですか?

A. ARD 自体は open specification として公開されており、underlying framework・protocol・provider を問わず共有できます。ただし現時点では、Gemini Enterprise Agent Platform(Google Cloud)への統合が最も進んでいます。Claude、OpenAI、Anthropic といった他プラットフォームへの対応は、9月時点では未公表です。クロスプラットフォームの ARD exchange は、将来の仕様として言及されていますが、実装は 2027年以降の見通し。

Q4. catalog.json 作成は自分たちでやるのですか?

A. 基本は組織側で作成します。ただし Gemini Enterprise Agent Platform の UI から『新規スキルを作成』→『Catalog に追加』という flow も用意されており、JSON を手書きしなくても GUI で定義できます。既存 API や MCP server が多い場合は、スクリプト化して自動生成する企業もあります。

HelloCraftAI では、ARD と Agent Registry を活用した企業エージェント基盤の構築、資産棚卸しから実装、運用 FAQ の策定まで支援しています。特に『何を公開して、何を統制するか』の設計段階は、業種・規制・データ管理ポリシーに大きく左右されるため、専門家と一度すり合わせることで、後からの手戻りを最小化できます。 お問い合わせ いただき、9月からの ARD 導入や Agent Registry 活用についてご相談ください。